砂浜にて/1(良時)

良守編|2014/07/07 posted.

旧サイトから。
( 夏のお話・新作を載せるまでしばらくかかりそうなので・・ 遅筆ですみません;)

砂浜にて/1

夏休みが始まってまもない、その日。

俺と利守のふたりは、自転車をギーコギコ、一所懸命にこいでいた。
向かう先は、最近できたばかりのリゾート風ホテル。

「“リゾート風”というのがポイントらしいよ、よくわかんないけど」

―と、父さんが差し出したプールのサマークーポンが事の始まりだった。
出版社からいただいたのだと、言っていた。

「―少し遠いからね、バスに乗って行くとイイよ」

父さんが提案してくれたが、俺はそれを丁重に断った。
なぜなら。
新調したばかりの変速ギアつき自転車を、どうしても使いたかったんだ。
だって。
ただ近所を走るだけじゃーつまらない。

Sホテルまでの、距離と道の雰囲気を思い浮かべてみる。
うん、良いんじゃね?
コイツのはじめての遠出にぴったりな気がした。

本当は後ろに何もつけないシンプルなヤツが良かったんだけど
万が一、人を乗っけることがあるかもしれない!
たとえば・・・そう、時音、とか。

―と、とにかくだ!

俺は、後ろ乗りできる仕様のものに決めたんだ。

利守も、俺のと似た感じの自転車を買ってもらったばかりで
「健康にもイイしね。うん、自転車で!」
―てコトで、俺たちは自転車ツーリングを楽しむことになったと、そーいうワケ。

夏季限定のガーデンプール。
きっと、ホテルならではの心地よさだろう。
街中でありながら、緑の木々に彩られたオアシスのような屋外プール。
夏が満喫できそうな予感に、自然ペダルを踏む足にも力が入る。

自転車はホテル目指して、真夏日の空気を涼風に変えていく。
利守を気にしながら、ヒュンヒュン速度を上げていく。
風景が立体的にひらけて、さまざまなチャームポイントを見せながら過ぎ去ってゆく。

「あれじゃない?」

利守の言葉に目線を上に遣る。
少し前方、深い緑のはざまにホテルらしき建物があった。
かれこれもう、1時間ほどは自転車に乗っている。
気分としては、実に3日くらいは乗ってそうな感じなんだけどさ。

◇◇◇

水着一枚で肩にタオルをかけ、プールサイドに出る。
市営プールなんかとは違って広々としているせいか、はしゃぎ声のようなものはあまり聞こえてこない。

おもむろに持ってきたサングラスをかける。

「あ、良兄ィ、なんか悪そう・・・ヤメなよ~らしくないから」

利守は笑ったが、これは重要アイテムゆえ、絶対に外せない。
夏における・・・その、
いわゆる男の挙動不審ってヤツをだな、ごくごくナチュラルに隠すことができる優れものなんだから。

夏の光が降り注ぐチェアに寝そべり、俺は無遠慮に女の子を眺める。
ここまでがんばって自転車をこいできた自分へのご褒美。コレくらいは許されるはずだ。

利守は早速、準備体操を始め、気がつくとプール中央あたりを気持ち良さそうに漂っていた。

なんだかんだ言ってても、あいつ、まだコドモなんだなー

利守のほのぼのっぷりに、自然と頬がゆるむ。

プールサイドに目線を戻す。

ビキニ姿の女の子が多くて確かに目の保養にはなるんだけど、
なんというか、その・・・もっとすっきりした水着はないものだろうか。
どうもあまりシュミに合わないんだよな、フリフリなのは。
てかナンだよ、水着なのにフツーの服みたいなアレは。
カラダのラインだって、カラフルすぎな色合いとか、そんなのに邪魔されちまってて
いまいちよくわかんねーじゃん。

つまんね。

小さくためいきをつきつつ、それでも諦めることなく、ぐるり、プールサイドを見渡した。

「お」

いたいた、俺好みなコ。
セパレートタイプの水着が多いなか、きれいなマリン・ブルーのワンピース。
スク水とは明らかに異なる優雅なフォルム。そのうしろ姿にごくりと唾を飲み込む。
女の子らしい丸みのあるカーブが遠目からも確認できて、俺は呆けたようにそのコを見つめた。
彼女の周りにだけ、涼しそうな雰囲気が漂っていて一瞬だが、夏の暑さを忘れてしまう。

お尻がぽこんとしてて可愛いな。
色も白いし・・・なんつーか清潔感がある。
どんなコだろ?こっち、向いてくれないかな。

そのときだった。
俺の願いが届いたのか、そのコがくるっと振り向いた。

「え」

その顔に見覚えがあった―つか、見覚えあるどこじゃねえよ!

「と、時音」

聞こえるはずもないんだけど、思わず口をついて出るその名。

いつもはひとつにまとめてる髪が、その・・・長いままにしてあって雰囲気が微妙に異なってる。
毛先がくるっとなってて・・・女っぽい。

つか、どうして!
ど、どーして時音がいんの!?

俺が脳内を???で埋めていると、
不意に時音は、カラダを後ろにのけぞらせるようにしてカラダに貼り付いた髪を、うしろにやった。
そのせいで、結構豊かな胸がぶるんと前に突き出されたカッコになった。
ぶるんと躍る、ふたつの胸は輝くばかりに眩しくて、おお!という感じがした。

「あれ・・・時音おねーちゃんじゃない?」

いつのまに戻ってきていたのか、利守が俺の隣でつぶやいた。
つぶやいたかと思うと、利守は無邪気にタタっと時音のほうへ走って行ってしまった。

時音はそばにやってきた利守に気づくと
少し驚いた様子のあと、利守に促されるように俺のほうへ視線をうつした。

そのまま寝そべっているというワケにもいかず、のっそりと上半身をチェアから起こす。
そして、わざと億劫そうに時音に手をあげた。

◇◇◇

「良守君、サングラス、似合ってるじゃん」

そう言って時音の友達・・・まどかさんが笑ったが、当の時音ときたら。すこぶる冷たいんだ。

「ど・こ・が!似合ってるって言うのよ?たく、生意気な。鼻の下伸ばして、ナニ見てたんだか」

「・・・・。」

時音のお尻に見惚れてましたー・・・なんて、とても言えねーよ。

「お、お前こそ、ナンだよ、その髪・・・」

俺は、チラッと時音を見て、殊更、気のない素振りで訊ねてみた。
だってコイツの髪・・・明らかに先のほうは巻いてあるし。

すると時音はハっとしたようにと髪に手をやると、頬を不機嫌に紅潮させた。

「こ、これはまどかが・・・」

「うん、たまにはこういう時音もイイんじゃないかって、私が。それで。ね?女っぽくてイイよね」

まどかさんが俺に微笑を向ける。

「良守君も、そう思うでしょ?」

ドッキーン!

俺が何も答えられずにいるのを満足気に眺めてから、彼女は更なる追い討ちをかけた。

「ワンピースも新鮮でしょ?カラダのラインがキレイに出るのって、セパレートよりこっちなのよねー実は」

“時音ってお利口さんなくせして、胸、結構あるしね。牛乳が好きっていうのは関係あるのかしら”

「なっ・・・まどか、なに言ってんの!?あ、あたし泳いでくる!」

時音は手首にはめていたゴムで長い髪を素早く結わえた後、
いそいそとプールのほうへ行ってしまった。
そしてライトブルーの水面をパシャパシャさせ、次の瞬間、勇ましく跳びこんだ。
複雑な幾何学模様の波をきらめかせて、ゆっくり水面を滑っていく。
まるで魚のように・・・なんて表現があるけど、時音の場合、まるで時音らしく泳いでいた。

隣でまどかさんが言った。

「がんばりなよ?絶対、良守君、脈あるから」

「え」

「勘よ、勘。こういうのはね、当たるもんなの」

意味深なことをつぶやいて、フフっと微笑した。

◇◇◇

聞けばまどかさんは彼女の従姉妹(みどりさんと言うらしい)親子と、ここに来ているのだとか。
クーポンは4枚あって、それで時音を誘ったのだと彼女は言った。

みどりさんの子供・・・というのがちょうど利守と同じくらいの年齢の男の子で
意気投合した利守とそのコは、楽しそうにプールを満喫している。

俺は、そんな彼らを眺めた。
でも、そろそろ帰らなきゃな・・・彼らには悪いが、しかたない。
どうせ、最初から2時ごろにはココを出るつもりでいたんだ。俺、夜は仕事だし。

―そう思ったとき、タイミングよく時音が訊ねてきた。

「あんた、何時ごろ、帰る?あたしはそろそろ・・・」

「俺も。つーかお前、ココまでどうやって来たの?」

「みどりさんのクルマで。帰りはバス予定。あんたは?」

「自転車」

“元気だねー・・・結構、距離あるじゃない?ここ・・・”
時音が驚いたとき、まどかさんが俺らの会話に割って入ってきた。

「ね、じゃ、こうしない?」

結局、まどかさんの提案により、
利守は夕方までココで遊んで、そのあと自宅までクルマで送ってもらう―ということなった。

確かに、楽しそうな利守を今、連れ出すのは少し酷な気もしていたので、この提案は都合がよかった。
だが・・・不安要素がひとつだけあった。

「あ、でも自転車で来たんです・・・僕たち」

するとあっさり。

「そんなのヘーキ。クルマに詰め込むわ。ミニバンなのよ、だから余裕」

まどかさんの隣、みどりさんが“任せて!”と、ひまわりみたいにカラっと笑った。

◇◇◇

「これ?良守の自転車・・・いいね」

ホテルの駐輪場、自慢の自転車の前に立つと、時音がささやかな感嘆の声を上げた。

俺と時音のふたりだけがホテルを去ることになり、必然的に俺の自転車が活躍する機会を得たのだった。

「スピード、出すぎない?」

時音が嬉しそうに、自転車の運転席にまたがった。

「お、おいっ!運転は俺だ」

「だ、大丈夫なの?だってあんた、あたしより小柄だし・・・」

「全ッ然、ヘーキ」

一瞬、ムッとしながら俺が言うと、おそるおそる時音は後部座席に横座り。

「いい?」

「OK」

よろよろ発進に、時音は背後から俺にしがみついた。
腰に時音の髪がからみついてくすぐったい。
急ブレーキをかけると、背中に柔らかいふくらみをギュッと刻印されるし・・・。

自転車の運転手ってちょっとイイかも。

しばらく走っていると、まっすぐ帰るのがもったいない気がしてきた。

「なー時音」

「うん?」

「ちょっと寄り道、してかない?」

「どこに」

「海」

少しの空白ののち、うん、と時音がうなずいた。

☆読んだよ☆

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author: lala (ララ)

『結界師』がお気に入りです。

原作で満たされなかった想いを二次創作にぶつけています。

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