時音のいない日/1

良守編|2016/10/25 posted.

「あっれ~・・・雪村は?」

きょろきょろとあたりを見回し、彼女がいないのを確認後、影宮閃が良守にたずねた。

「・・・・・・修学旅行。」

ぼそり、良守が答えた。

◇◇◇

時音不在時の良守は、まったくと言ってよいほどに覇気がない。

以前、土地神殺しの一件後、時音は自宅謹慎処分を受けた。

期間は3日。

その間、時音に会えず、悶々とした良守が思わずとった行動ときたら・・・・。

しかし、あのときはまだ救いがあった。

烏森にはいないものの、時音は彼女の家にいたのだから。

が、今回は―。
家にも学校にも・・・どこにも彼女の姿は、ない。

烏森学園では高等部2年次に修学旅行がある。期間は3泊4日。

早い話が、良守は時音に4日間も会えないのだ。

修学旅行については田端がいろいろと教えてくれた。
なんでも修学旅行でくっつく男女がとても多い、というのだ。

これは一種の伝統のようなもので、
3泊4日のあいだ、それぞれの素顔を見ることで芽生えるほのかな恋ごころ、
また、来年は受験生という共通項。
そういったモロモロが混在し、高校生男女の恋愛模様、どうしても何やら艶やかな香りが漂うのだとか。

「雪村時音、誰かとくっついて帰ってくんじゃね?」

田端が良守の脇をつつく。

「いや、それはないね。そういうんじゃないだろ、あいつは」

「何、その余裕な発言!揺れる高2女子の心をつかむ男子出現。確率はかなり高いぜ?」

“わかってねえなぁ~”とでも言いたげな良守は勝ち誇ったその表情を田端に向ける。

「いやいや、だけど統計的にはそういうもんだぜ?
実際、ウチの学園のカップル誕生率を上げてるのはこの修学旅行だからなー。
所詮、人間など弱い生き物なんだよ、うん」

「わかったようなこと言ってるな、田端」
市ヶ谷がめがねを直しながらつぶやいた。

「雪村時音、なんてったって人気あるからなー。
とくに高等部3年男子にとっちゃ、今年限りだもんな、彼女の姿を拝めるの。
水面下じゃ、いろいろあるってのもうなずける」

「・・・なんだよ、それ。だいたい修学旅行にゃ、3年は関係ねーだろ?」
良守があからさまに不機嫌な表情をして口を挟む。

「いや、だからさー墨村。3年がどうってことじゃなくて。彼女、それくらい人気ある女子ってことさ。
同級生ともなれば、そりゃ~普通に接近するチャンスいっぱいあんだから。
思う以上にいろんなことありそーじゃね?な?市ヶ谷、お前もそう思わない?」

「・・だな。」

市ヶ谷の同意にうなだれた良守がつぶやく。 「・・早く帰ってこねえかな、時音」

◇◇◇

「よぉ」

学校からの帰り道、閃と秀と一緒になる。手を上げる二人に力なく会釈する良守。

「元気ねえな・・・・雪村いなくてさっぱりか、良守。」
「ウチのクラスでもうわさになってるよー時音ちゃん」

秀の言葉にピクっと良守が反応する。

「ど・・・どんな?」

「あのね、時音ちゃんてかわいいから有名でしょ。この学校、修学旅行中に告白する男子が多いんだって。で、時音ちゃん、誰かの彼女になって帰ってくるんじゃないかーって」

秋津秀が穏やかに話すと、その隣で影宮閃がフン!と鼻でせせら笑った。

「ンなの、ありえねーって。だって雪村だぜ?」

閃の言葉に俄然、勢いづく良守は“な?そうだろ!?俺も同じこと思ってた”などとひとりうなずく。

「ああ、男にゃ興味ねえだろ、あの女。まだめざめてない感じ。
・・・・俺らは思いっきりめざめちゃってるのになー」

“な?そうだろ、良守?”ニヤリと意地の悪い笑みに、
良守はボっと瞬間的に真っ赤になり、その場に立ち尽くす。

その姿に閃と秀の二人は思わず吹きそうになった―。

次に閃の口から出た言葉は

「まー、しかしアレだな。普段いっしょにいる男が俺らみたいなガキだからな。
進路のことで話し込んでるうち―なんてのはアリかも。そうだよ、俺ならそうする。
そっち方面から誘えば案外、落ちやすい女だったりして、あのテの優等生女子」

やけに女性に詳しく、そして良守にサディスティックな彼なのである。

普段ならば、時音に逢うことで自然に養われるはずの英気。
それが不可能な現在(といっても四日間なのだが・・・)
「あなた、やる気あるのですか?」
夜の烏森で時音の代わりを務める時子にはあきれられ、
斑尾と白尾にはため息つかれ。

この惨状を目にし、
「ひどいな・・・」 良守を憐れんだ閃は、ある計画を思いついたのだった。

「お前さ。ちっとはほかの女にも目ぇ向けてみれば?」

翌日、1限目から屋上で寝転がっている良守の隣に腰をおろすと、閃が言った。

「無理」
「・・・即答かよ」

はぁぁっとためいきをつくと、閃もゴロンと寝転んだ。
ぼんやりと空を仰ぐ。

「つ~か、そんなイイかねぇ、スカート下に短パンはくよーな女だぜ?」
「知るかっ!」
「あの、さ。姉弟愛、みたいなモンでもなくて?」

閃のその言葉に良守がガバっと起き上がる。

「なっ、なんだよ、それっ!俺は・・・・あいつをそんなふうに思ったこと一度もない!」

激しい反応にぎょっとした閃は
“別に深い意味があって言ったんじゃ・・・”と言いかけるも、良守に遮られる。

「それ・・・たぶんあいつも思ってるんだろうけど―違うんだ。
俺は・・そういう目で見たことはない。俺、時音が―」

「あーもういいって!わかったから。」

今度は閃が良守を制す。
そして「俺、今から長いひとりごと吐くけど、いいか?」 にやりと笑った。

   てことはさ。

   雪村しか見えないってことはさ。

   もしかしてこの先ずっとおまえって、あの女だけしか知らない世界なの?

   それでいいの?

   ちょっとは楽しめよ~・・・
   たかが女ひとり何日かいないだけで、そこまで元気なくすってどうよ?

   ほかも見てみろよ、大真面目な話。

   それに―ココだけの話、
   お前がほかの女に目を向けてるって知ったら、
   雪村がどうするのかとか知りたくねーか?

   そうしたらあの女もちょっとくらいは何か感じて、
   結果、お前とも急展開!てなこともあったり、な?

   今のまんまじゃ、
   かわいそうだけどお前、雪村にとっちゃいつまでたっても「ただのお隣さん」だろ。

   しっかりしろ、正統継承者!
   長い人生、ひとりの女だけ見ててどうするよ!?

で、これは提案なんだが―との前置きのあと
「どうだ、ひとつ、ノってみるか?」 キラリ、閃がその瞳を輝かせて言った。

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author: lala (ララ)

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