雨音/2

良守編|2016/10/28 posted.

「あたし、このごろ」

時音が濡れたまなざしを良守に向ける。

「―って良守どうしたの?」

良守は時音の上半身から目を離せないでいる自分に気づき、
またそんな自分を時音に見透かされるのだけは絶対に避けたく、
不思議そうに自分を見る時音にあわてて背を向けた。

「なっ!なんってカッコしてんだっ!?」

「あ。」

良守に言われてようやく気づいたらしい時音は急いで胸元を手で覆う。

「・・・もちょっと意識しろよー俺だってオトコ・・」

そんな良守の言葉も時音の耳にはどこか遠くの雷鳴のようにしか感じられない。
確かに、時音はここ最近、少しおかしいのである。

やや上気した顔色で良守は仕方なく新たにもう1枚タオルを取り出し、それを時音に押し付けた。

「当てとけっ!ったく、気をつけろよなー、場合によっちゃ妖よりタチわりぃ~ぞ」

ソッポを向き、口をとがらせる良守に
時音はごめんごめんと微笑むも、すぐにまたぼんやりした表情に戻って闇を眺める。

「さっき、何言いかけた?」

「え?」

「ほ、ほらっ!その、さっき、おまえ何か言いかけたろ?」

時音はしばしキョトン、としていたが「ああ!」と思い当たった。

「おばあちゃんにも言われたの・・・近頃、何考えてるんだ?って」

「なんか悩みでもあんのか?」

それなら言え!俺、聞くからーと力強く言う良守に時音はつぶやいた。

「雨音を聴いてると思い出すのよ、あの人の言葉」

「・・・・あの人って誰だよ?」

良守が、あからさまに不機嫌な声でたずねる。もう、答えはわかっているのに。

「夕上さん」

良守はギュっと拳を握り締めた。

「雨とあいつとどんな関係があって、お前、あいつのこと思い出すんだよ?」

「雨が好きだって言ってたの。ピアノの音みたいって。だから聴いてるとなんだか」

「なんだか・・・何だ?言ってみろ」

凄みのある声と言葉が普段の良守らしくなくて、時音は少し驚いた表情で彼を見つめる。

聞こえるのは、校内の木々を揺らす風の音と降りしきる雨の音。

時音はどうして良守が急に怒った態度をとるのかわからずにいた。
良守は、じっと時音を見つめたまま視線をはずさない。
真剣なその表情に時音は言葉を紡ぐことができない。

なんで怒ってるの・・・・・?

「・・・・なに、急に不機嫌なのよ?」

しばしの沈黙の後、時音はやっと声を絞り出した。

「わかんねえ?俺の気持ち。あいつの名前聞いて俺がどう思うかとか・・・考えねえの?」

「どうかしてるわ。あの人がいてくれたからあたし、いろんなことに気づいた。雨音聴いてると夕上さんのお姉さんのこと思って息苦しいのよ・・・」

「・・・俺は?」

「うん、感謝してるわ。助けに来てくれて。」

「そうじゃなくて。俺のこと、どう思ってるんだよ。好きなのか、嫌いなのか」

時音は「何言ってんの」と良守に背を向けた。

「いきなり何よ。なんでそんなことになるの?いい加減にしなよ、あんた」

その刹那、良守が右手で時音の手首をとらえる。

「待てよ」
「離して」

時音は良守の手をふりほどこうとした。だが、良守の手は強く時音を握ったまま離さない。

「好きだ」
「いきなり何!?」

時音は良守をにらみつけた。

「今、仕事中なのよ?なんで夕上さんの話からそういうことになるの!」
「仕事するときにそんなじゃダメよ」と時音が戒めると、突然唇にやわらかくあたたかな感触。

「・・んっ・・・・」

驚いた時音が身を引こうとしたが、左手で頭を押さえつけ、身動きを封じる良守。
思わず時音は、良守の装束をきゅっと握りしめた。

何なの、これ

良守の腕の中で、時音は混乱していた。

唇が離れると、良守が時音を包み込むように抱きしめる。
その体のあたたかさと胸の鼓動に時音はめまいがした。

一体、何がどうなって、こんなことに?

最近のコメント

plofile

author: lala (ララ)

『結界師』がお気に入りです。

原作で満たされなかった想いを二次創作にぶつけています。

◇声をかけていただくと嬉しい^^
ご感想、ご意見、ご要望など→各記事「WEB拍手」、日記「コメント欄」からど~ぞ♪ 
※カテゴリ「日記」のコメント欄、使用可能になりました。

◇現在、サイト工事中。ご不便おかけします。(もうすぐ完了しそうです)