ほんの少しの可能性

良守ではない誰か編|2016/10/28 posted.

「雪村」

杉沢が斜め前に座る髪の長い女子の名を呼ぶと
高い位置でキュっとひとつに結わえられた髪が揺れ、おもむろにその生徒が振り向く。

何?と杉沢を見るその瞳に一瞬、たじろぐ。

「あ、あのさ。今日このあと、俺ら試合なんだ。観にこないか?」

今日は半日授業。

午後からはこの烏森学園から程近い中央東高校のグラウンドにて行われる対校試合がある。

烏森学園高等部のサッカー部はなかなかの強さを誇っており、
文武両道の名にはじない、いろんな意味で優秀なイレブンなのだ。

杉沢はそのサッカー部主将を務めている。
当然、学園の女子からは絶大な支持を得ていて、本人もまんざらではないのだが―。

同じクラス、斜め前に座っている髪の長いこの女子生徒・雪村時音だけは
ほとんど彼に興味らしい興味も示さず、飄々としているのだ。

今日だって、学園内の空気はあきらかに浮き足立っている。

サッカー部の対校試合のためだと思うのだが、彼女にとってはそういったこと一切が眼中になく、しかも杉沢から直に試合観戦を請われているにもかかわらず、「?」な表情。

“お願い、来てよ”という言葉が杉沢の口から出そうになったとき、
この女子生徒がようやく口を開いた。

「そうね、また。」

にっこり微笑すると、何事もなかったように前を向いて帰り支度を始めた。
もう、終礼の時間なのだ。

杉沢は彼女の残したかすかな笑顔に言葉を返すこともできなかった。

―またってのはどういうことだ?このあと来るってことか?また今度ってことか?
いや、ただの社交辞令か。

杉沢の脳内をそんな思考がかけめぐる。

これまで何度も彼女に試合を観に来てほしいと願った。
それらしい会話をわざと彼女の耳に届くところで言ってみたりもした。
でもまったくそれは報われずに現在に至っている。

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author: lala (ララ)

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