来てくれた!

良守ではない誰か編|2016/10/28 posted.

時音が校門に向かって歩いていると幼馴染の少年を発見する。
時音の姿を視界に認めるとパァァ~っと表情が華やぐ。

(もうっ。ほんといつも良い笑顔するんだから)

こんなとき、気恥ずかしくなる反面、この少年のことを多少は可愛く思える時音である。

「あれ?友達は?」

「うん。サッカーの試合に行くんだって。今ごろお弁当食べてるわ」

「そっか!んじゃ、俺らも行かね?」

「え?」

「せっかくだから俺らも。たまにはいいだろ?」

「なんであんたと」

「いいからいいから。昼、なんか買ってくか?それともどっかで食べる?」

「仮眠とらなきゃ、あたしらきついよ?」

「まぁまぁ、なんとかなるって。」

陽気に話す良守をいぶかしがりつつも、時音は“そうね~たまにはねぇ”と誘いに応じる。
ちょうどクラスの杉沢から「来てよ」と言われたこともあるしな~、と。
彼はたしかサッカー部主将だったはず。たまには、学園生活満喫も悪くないか。

「だけど、どうしてサッカーなの?」

「たまには、さ。な?」

良守には理由があった。

今朝、教室で。

3年になってからクラスが離れてしまった田端がやってきたのだ、占いの本を携えて。

さんざん田端を「占いなんておまえ女か?」とからかっておきながら、
彼の「墨村に恋のチャンス、だって!」という発言にピクっと反応。

「今日はスポーツ観戦で盛り上がる恋仲だとさ。今日、ちょうどあるぜ、サッカーの試合。」
「ど、どこで!?」

―というワケ。

良守はコンビニで時音と一緒におにぎりやパンを物色しているだけで幸せいっぱい夢いっぱい。

我ながらシンプルなヤツだな~との自覚のもと、思いっきり相好を崩してしまう。

考えてみれば、時音との逢瀬はもっぱら夜の烏森。

こんなふうに自然な接近は、稀有なことゆえ、良守のハピネス気分も致しかたないというものである。

◇◇◇

中央東高校のグラウンドにふたりが到着すると、すでに校内は両校の生徒で満員御礼。

「座るところあるかなぁ。こんなにすごい人気だったとはね」
「そりゃ、対校試合だからな。燃えてるだろ」

「余裕だなー、おまえら。」

シニカルな響きに振り向くとそこには閃と秀。

「わっ!何おまえら。」

「わ!じゃねえよ。ナンだよ、雪村まで。夜の仕事に支障出ちまうぞ!?」

「わぁ、良守くん時音ちゃん!こういうのも楽しそうだよね!みんな行くみたいだから閃ちゃん誘ったの。二人にも声かけようよって言ったんだけど、閃ちゃんが仮眠とる邪魔したらダメだろって」

「そ。俺はね、やさしいの。わかってる?とくに雪村」

時音はそんなやりとりに適当に反応しつつ、グランド中央あたりを眺める。

杉沢のことを確認したかった。

別に興味あるわけではないが、“来てよ”と言われていただけに、彼のことが気になった。

「誰か探してんのか?」

隣で良守がたずねる。

「うん―。サッカー部の主将がクラスメイトなのよ。今日も来てくれって言われたから一応、探しているんだけど・・あ!いた」

「ふ~ん。来てくれって、言われたんだ。ふ~ん」

「何?」

「なんでもねえよ」

グラウンドのセンターあたりに杉沢は、いた。
普段とは違う姿のクラスメイトを時音は少し感慨深げに見つめる。

不意に杉沢と目が合った。

すると、彼の緊張していた面持ちが、瞬時ににこやかな笑顔に変わった。

なんとなく動揺した時音は思わず良守のほうへ視線をそらす。

「なんだよ?」

自分に向けられた視線にベクトル違いの照れを見せる良守。

「・・・・。」

こういうとき、時音はほんとうに鈍い、というかよくわからない反応をする。

「笑ってる、杉沢くん」

「は?誰よ、杉沢?」

ほら、と時音はグラウンドにいる彼の位置を良守に教える。

杉沢、という名を時音から聞き、その彼の姿をグラウンド中央に認めたとたん急に、「杉沢さ~ん!」良守の耳に黄色い声援が届き始めた。

「なっ・・えらい人気なんだな」

「なんだ、良守くん、知らないの?キャプテンなんだよ、サッカー部の」

ね?と秀が時音にウィンクしてみせる。

「え、そうなの、時音も知ってるの?」

「うん、同じクラスで席も近いの。時々誘われるんだけど、一回も観戦したことなくて」

「それって~・・・・」と良守、閃、秀の3人が声を揃えて反応する。

でも、その後の言葉が継げず、3人みな黙ってしまった。
時音はこういうことにいたって鈍感なのだ、ということをたぶん同時に思い出したのだった。
そう、良守までも。

そのころ。
グラウンド中央、当の杉沢は、時音の姿にすっかり上機嫌であった。

(雪村、来てくれた。少しは脈ありって考えても良いのか?)

その日のゲームは、接戦ではあったが、僅差で烏森学園が勝利をおさめた。

もちろん、杉沢の活躍が大きく影響したことは言うまでもない。

~fin.~

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