焦燥/2

良守編|2016/11/01 posted.

夜の烏森。

隣に座る時音の横顔を、良守はすがるような思いでじっと見つめる。
時音に対し、淫らな想像をしている男が今この瞬間にもいるかもしれないのだ・・・
そう思うだけで、息苦しい気持ちが渦巻き、胃の底がヒリヒリしてくる。

「・・・・何?」

時音の声にはっとして、良守はツイと視線を外す。
時音は不思議そうに、そして多少迷惑そうにそんな良守を眺めた。

「あの、さー」

良守は視線をそらせたままで、意を決し、時音にたずねる。

「お前って、まだ、その・・・・・だよな?」

「は?」

「だからっ!その、まだ・・・しょ、しょっ・・・」

 

そのとき

「良守っ!!」

 

いつのまにやってきていたのか影宮がすぐそばにいて良守の耳を引っ張った。

「・・・ってえ!何すんだよっ!?」 怒る良守をグイっとうしろに押しやり、
「こいつ、ちょっといい?」 そう言って時音にニコっと笑顔を向けた。

 

「なんだよ?」
良守は閃の手をふりほどくと、不機嫌に閃をにらみつけた。
閃は、まあまあ~と良守をたしなめる。

「さっき、お前、またワケわかんないことそのまんま口にしようとしてただろ・・・?」

「え・・・・」

「な、秀?お前も聞いただろ?あれは絶対」

「うん、そうだよね、たぶん良守くん・・・」

すぐに思い当たって良守は瞬間、バツが悪そうにうつむいた。

「あのなー・・・そういうこと言うとお前、さらに相手にされなくなっちまうぞ?」

「さ、さらにって言うなー!!」

閃がゲンナリした表情で良守を見てためいきをつく。

「デリカシーのかけらもないな・・・ストレートすぎるのも問題だぜ」

「だって・・・気になるから」

「大丈夫だよ、あの女は。その高校生の言うとおり、まだだって」

「・・・・・。」

「まぁなー・・・ああいうガード堅い女ほど、それ崩そうとするヤツってのはいるからなー。 心配なのもわかるけどさ。ただ、そーいうの言い出すとキリないだろ。あんま気にすんな」

あまりにも元気をなくしている良守に、閃も多少は慰めるような物言いになる。
秀も「そうだよ、気にしたら負けだよ」と良守を気遣っている。

良守はグっと拳を握り締めた。うつむいて、低い声で言う。

「・・・・どーして、縮まんないだろーか、思うと」

ひと呼吸置く。

「焦る」

そしてふぅーっと力を抜く。

「・・・それは仕方ないだろ?」
「そうだよ、考えてもムダなことは考えないほうがイイよね」

閃と秀の優しい言葉も今の良守の耳には届かない。

 

「・・・・あいつはいつもずっと先にいて、
周りにはあんな・・・吉川みたいなヤツがゴロゴロ」

うつむいたままの良守、閃がポンポンとその肩を叩く。

「でもなー。だからって雪村に処女かどうか確認するっていうのはまた違う話だろ? だいたい、あの女がそのテの質問に素直に答えると思うか?
お前、もう一生、口きいてもらえなくなるぜ?・・・てか、滅されるぞ?」

「・・・・・。」

 

◇◇◇

 

翌日、学校からの帰り道。
良守は閃、秀と3人で連れ立って歩いている。

 

「あ!あいつ・・・!」

 

良守は、10メートルほど前、時音が歩いているのを認めた。
しかし、今日はひとりじゃない。
隣にはきのう、学食で生娘判定をオーソリティって感じで行っていた吉川が・・・・。

しかも、二人は並んで歩きながら和やかな雰囲気、談笑しているではないか!

良守はしばし呆然となる。
(なんで・・・・あんなヤツと・・・・・・・)
次の瞬間、考えるより先に体が動いていた。

 

突然ズカズカと二人の間にグイっと割って入る。

「なっ・・・」 咄嗟の出来事に驚く吉川。

「帰るぞ!」
「ちょっ・・・良も・・・っ!」

驚く時音の腕をつかむ。
抵抗を試みる時音だったが、良守はさらに力をこめ、その腕をねじあげた。

「痛っ!?」
「うるせえ!」

あっけにとられている吉川と閃、秀を残し
時音の腕をつかんだまま、良守はズンズンと前を向いて歩き、その場から離れた。

 

呆然と見送る3人。

 

「ナンだ、ありゃ・・・」 吉川が首をかしげ、閃と秀に「な?」とアイコンタクト。
そして気を取り直すように大きく伸びをし、歩いていった。

 

沈黙してその光景を見届けたのち、
「・・・良守くんて」 秀がつぶやくと
「時々、すげえよな・・・」 閃が感心したようにうなずいた。

 

 

「ちょっ・・・・痛いじゃない!離してっ」
「・・・・・・。」

無言のまま、しばらく歩いてから良守は時音の腕を離した。
痛いじゃない、もう・・・と時音はようやく自由になったその腕をパンパンとはたく。

 

「あいつ、吉川」

低い声で良守が言う。

「・・・・知ってるの?」 時音が意外そうな表情を良守に向ける。

 

「なんであんなヤツと帰ってんだよ!?」

「偶然、一緒になったのよ、同じ方向だから」

「が、学校は俺と帰るんだ!」

「さっきから何っ!?誰と帰ろうがあたしの勝手じゃない!
いつも言ってるでしょう、昼間まであんたとつるむ気ないの!」

 

容赦ない時音の言葉に、ズキンと心を痛める良守だったが、勇気を振り絞る。
時音に背を向け、つぶやいた。 「・・・・ダメだからな、絶対」

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author: lala (ララ)

『結界師』がお気に入りです。

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