焦燥/3

良守編|2016/11/01 posted.

12月も中旬にさしかかっていた。

今日も高気圧に覆われているために空気は乾燥し、空は青く澄み渡っている。
だが、気温は低い。
日中の気温は10度に届かず、真冬の寒さが続く日々だ。
行き交う人々はみな、コートの襟を立て、少し背を丸めるような姿勢で歩く季節。

 

そんな、冬の帰り道。

 

「クロカンのあとにさーどうかな?」

時期も時期だから、カジュアルなクリスマスパーティって感じで・・・・と、 吉川とその仲間たちが、寒空の下、帰宅途中の時音とまどかに誘いをかける。

自然、時音たちは彼らと並んで歩くかたちとなった。

「幹事、誰なの?」

まどかの質問に、吉川が小さく手をあげてみせた。

「へぇ!楽しそう。ね、時音、ど~する?」

時音は、曖昧な表情を浮かべてから “考えとくわ” と小さくうなずく。

「時音、いっつも不参加だからさー、こういうの」

たまには一緒に行きたいよ~と言うまどかに、男子たちがしみじみとした風情であいづちを打った。

「店はテキトーに決めとく。でさ。決まりごととして、年齢以上に見えるよーなカッコで参加。一応、ね」

こういうのお約束だから、吉川がニヤっと笑った。

 

いっぽう、そんな時音たちの姿を少し後方から認めていたのがほかならぬ良守であった。
しかし今日は昨日のような行動には出ることはなく、うつむいて時音たちの横を通り過ぎる。

「あ・・・・・」

時音が気づいて小さく声をあげる。が、良守は気づかぬフリで足早に去っていく。

「あれ、昨日の・・・・」 吉川がつぶやく。

「いいの?」 追わなくて・・問いかけるまどかに返事をせず、時音は去ってゆく良守、その背中を見送った。

 

 

夜の烏森。
今夜はいつもより一段と寒さが身にしみるようだった。冷えた空気が心までをも刺すような夜―。

時音が到着すると、良守は既に屋根の上に座っていた。
声をかけるが、それには応えずぷいっと顔をそむける。

「もうっ!何よ、ナンなの?言いたいことあるんなら言いなさいよっ」

たく、感じ悪いんだから、と時音が良守をにらみつける。
良守はムスっとした表情のまま、視線を合わさず言い放つ。

「お前がっ!言うこと聞かねーからっ!!」

その答えに、ふぅーと深呼吸し、時音はゆっくりと良守の隣に腰を下ろした。

「・・・・なんであんた、吉川くん毛嫌いするワケ?」

「ヤなんだよっ」 時音のほうを向く。

「お前、高等部男子には気をつけろよ? あ・・・あいつらの考えてることなんてロクなもんじゃねーんだからなっ!」

至極、真剣な表情の良守を黙って見つめていた時音だったが、結局ふふふっと吹いてしまった。

「な・・・何だよ?」

「だって・・・・ていうか、何よ?ロクなもんじゃないって」

「ヤ、ヤラシイことだよ・・・あいつらそーゆーのばっか考えてんだぞっ!?」

「・・・・・何を言い出すかと思えば」

そして“ワケわかんないわね、あたし、見回り行ってくる!”、
あきれたように言って良守を屋根の上にひとり残し、烏森巡回へ向かった。

 

 

仕事を終え、装束を脱ぐと時刻はAM3:50。
朝食まで少し眠れるな、と良守は思った。
思ったが、実際には時音のことが頭から離れず、
とてもじゃないがのんきにすやすや―なんていう平和的状況にはなりそうもない。

時音は誰とも付き合っていないし、
たとえ慰労会に参加するにせよ、そんなのは別に、どうってことはないはず。

頭ではわかっているのだ、きっと心配することじゃない。

だけど、それでも。
イヤなんだよ、時音があんなヤツらと一緒にいるなんて。
だってあいつらの話題ときたら―。

そんな不安にかられている良守のネガティブ妄想は終わりを知らない・・・・。

(あいつ、何かの拍子で、キ、キスとかされちまったらどうするんだ!?)

ガバっと布団から起き上がると、抱え込んだ枕をじっと見つめる。

(ていうか・・・キスってどうすんだ?映画とかじゃ、確かこんな感じ?)

枕に顔を近づける。

(斜め45度くらい?これくらいの角度か・・・?)

ちゅっ

枕に口づける。そう、時音の顔を思い出した。時音のくちびるをイメージする。

「時音・・・・」

思わず口をついて出る名。
そっと口づけるだけのつもりが、
彼女の桜色のくちびるを思い描いた途端、激しい欲求が衝き上げ、思わず枕相手に深いキス。

そしてハっとする。(な、何やってんだ、俺っ!?)

自身のはずかしすぎる状況に赤面し、
少年の、いや、男の衝動を甘くみてはいけない、と良守はあらためて思う。

こうしているあいだにも、
時音を今の自分のように想像のなかで好きにしている男がいるかもしれない。
そう思うと、いても立ってもいられない気持ちになるのだった。

 

◇◇◇

 

白いマフラーに首をうずめるようにして時音が家路を急いでいると、不意にうしろから声をかけられた。

 

「吉川くん」

寒くなったね、などと話しながら彼が横に並ぶ。
話題は自然と今度のクロカン慰労会へと移行してゆく。

「雪村はキライか、こういうの」

「・・・苦手かな、疲れる」

「男に口説かれて困る、か」

「え」

「冗談だよ、それより進路どうすんの?」

「うーん・・・」

「みんな、雪村は東大か?くらい思ってるぜ?」

時音が笑う。
その笑顔に吉川は軽い動揺をおぼえたが、すぐさま態勢を立て直す。

「いけんじゃないの、雪村の成績をもってすれば」

「考えてない。私には私の道があるしね」

はっきりした口調で思わず真面目に言ってしまい、
時音はそのことに対し顔を赤らめた。ハっとしてうつむく。

あんぐり口を開けたまま、時音を見つめる吉川だったが、次の瞬間には微笑んでいた。

「私の道、か。な~んかぐっとくるフレーズ・・・・・・」

言いながら吉川は、照れを隠すようにうつむいた時音の横顔をじっと見つめた。

 

◇◇◇

 

「へぇ~・・・慰労会、ねぇ。この時期ってコトであれか、クリスマスパーティ?」

そういや、秀も言ってたなぁ、クロカンのあと、そーゆーのあるとかないとか。
とってつけたよーなイベント、ほんとお寒いぜ・・・
ミエミエじゃん、男が企画してんだろ、それ。

あーやだやだ、と閃が顔をしかめた。

 

翌日の学校、屋上で良守と閃の会話である。
ふたりは寝転がって空を仰いでいた。お昼寝用結界を張っているので、中は適温、寒くない。

 

でもさ、心配することないんじゃねーの?だって雪村のガードはいつだって鉄壁。
たぶん、高等部男子たちもお互いが足の引っ張り合い。
結局、ナ~ンもないんだって、あのテの女子は。
逆に目立たないコのほうがいろいろあるもんなんだ、そーゆーモンなの。
それにパーティだかなんだか知らねーけど、ンなモンであの女おとすのはムリだって。

 

閃の言葉はかなり的を射ていて、まさに真実なのだが、今の良守には気休めにさえならないのだった・・・。

最近のコメント

plofile

author: lala (ララ)

『結界師』がお気に入りです。

原作で満たされなかった想いを二次創作にぶつけています。

◇声をかけていただくと嬉しい^^
ご感想、ご意見、ご要望など→各記事「WEB拍手」、日記「コメント欄」からど~ぞ♪ 
※カテゴリ「日記」のコメント欄、使用可能になりました。

◇現在、サイト工事中。ご不便おかけします。(もうすぐ完了しそうです)