焦燥/4

良守編|2016/11/01 posted.

「年齢以上に見えるようにって、ねぇ」

 

まどかがうきうきした様子で、着て行く服のことや何かをあれこれ思案している。
時音はそんな友人の様子を穏やかに眺めながらたずねる。

「まどか、誰か目当ての人でもいるの?すっごく楽しそう」

すると 「うん!いるよ?」 シレッと言ってのけた。

 

◇◇◇

 

冬の晴天の下に烏森学園高等部クロスカントリー大会も無事終了。
いよいよ“慰労会”と称した、その実「クリスマスパーティ」が催される今日、土曜日。

合同で体育を受講しているA組とB組の生徒たちに声がかかったが、参加率は3割と低い数字。

終了予定時刻が午後8時ということもある上に、
企画しているのが吉川グループということで、真面目な生徒たちが敬遠したのがその主な原因だった。
ただ―。
そうすると参加者は必然的にみんなそこそこ華やか且つ柔軟性のある生徒たち、ということになる。
このあたりも、もちろん吉川たちは計算の上、まったくもって巧いものだ。

 

 

時音は自分の部屋、机の上に頬杖をつき、窓の景色へ視線を向ける。

(今夜は雪になるかもね) それにしても、と時音は思いをめぐらせる。
まどかの好きな人って誰だろ?全然気がつかなかった。

細く長い人差し指をくるくる回しながら微笑した。
このあいだ、吉川の言ったことがぼんやり思い出される。

(そうよ、ほんと言うとちょっとだけ困ってる)

2年になってからというもの、やたらと男子から声がかかる。
「付き合ってください」
何度か言われた言葉。
そのたびに、「そういうのわからない、興味ない」と断った。
すると、翌日からその男子は時音を避けるようになる。
おはようと声をかけても、聞こえぬフリ。
そんな彼らの姿に時音は寂しさをおぼえた。
「付き合う」って一体ナンなの?
いつも疑問で、そして同時にくやしい。
何が変わるというの・・・そんなこと言わなければずっと自然でいられたのに―。

そこで思考をとめる。
時計を見て立ち上がり、クロゼットの扉に手をかけた。

時刻は4時半を少し過ぎたところだった―。

 

 

同じ頃、良守は、駅前をひとり所在なげにウロウロしていた。

週末の夕方だけあって、人が多い。
しかも―なんといっても、この時期、クリスマス。
聖夜を待つ街には、一種独特の、浮き足立った空気が溢れている。

そんななかにあって、良守はひどく自分がみじめで情けない存在であることを思い知る。
慰労会が駅前ビルの地下「アルフィー」という店で催されることはリサーチ済み。

(今日の俺、完全にフライングだな・・・・)

懸念が脳内を渦巻く。
またもや時音に気持ち悪いと言われてしまうかもしれない。そう思うと正直かなりつらい。

しかし、なのだ。

この状況を放置してはおけない!
男にはやらねばならぬときがある。
妖であろうと、ふしだらな高等部男子であろうと、そんなの関係ない。
俺はすべての脅威から、あいつを守るんだ。

「嗤わば嗤え!」 人知れずつぶやき、良守は自分を奮い立たせるのであった・・・。

 

 

良守がひそかに拳を握り締めているそのあいだにも
ぞくぞくと慰労会参加メンバーらしき面々が階段を下り、地下へと潜っていく。
みんな少しばかりアダルトな雰囲気で一見したところ、高校生とはわからない。

良守は意を決し、店へと向かう人の波に乗り、階段を下りていく。

(酒とか出るよーな店っぽいな)
「アルフィー」の店構え、その雰囲気に、良守は不機嫌なその表情をさらに濃くした。

時計の長針はそろそろ5時を指そうとしていた。

最近のコメント

plofile

author: lala (ララ)

『結界師』がお気に入りです。

原作で満たされなかった想いを二次創作にぶつけています。

◇声をかけていただくと嬉しい^^
ご感想、ご意見、ご要望など→各記事「WEB拍手」、日記「コメント欄」からど~ぞ♪ 
※カテゴリ「日記」のコメント欄、使用可能になりました。

◇現在、サイト工事中。ご不便おかけします。(もうすぐ完了しそうです)